新生児ヘモクロマトーシス

概要

1. 概要

新生児ヘモクロマトーシスとは出生後早期から肝機能異常を呈し、組織学的に肝臓および、膵臓や心臓などの網内系以外の諸臓器に鉄沈着を認める稀な疾患である。鉄代謝異常に起因し、常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝性ヘモクロマトーシスとは病態が異なる。

2. 原因

特徴的な発症パターンと、胎児発育不全を認める症例が多いことや、出生時に既に肝硬変に至っている症例がいることから、本疾患は遺伝疾患ではなく母子同種免疫学的機序により胎児期から肝障害をきたすと推測されている(GALD:gestational alloimmune liver disease)。また、本疾患で認められる鉄沈着は、肝障害の原因ではなく、臓器障害の結果として生ずると考えられている。

3. 症状

胎児期には流産や早産、胎児発育不全、羊水減少、胎児腹水が認められることが多い。出生した場合でも、生後早期から肝機能異常が認められ、胆汁うっ滞や浮腫、肝性昏睡などの急性肝不全の徴候を呈する。

4. 治療法

診断がつき次第、免疫グロブリン大量静注療法(1g/㎏)、カクテル療法(抗酸化剤、鉄キレート剤)、交換輸血/血漿交換などの内科的治療を開始する。内科的治療が奏効しない場合には、肝移植の適応である。次子への出生前治療としては、母体に対する免疫グロブリン大量静注療法(1g/kg)が有効とされており、現在、医師主導治験が実施されている。

5. 予後

2008年までの本邦の内科的生存率は5%(1例/21例)と予後不良であったが、新生児への血液浄化療法や生体肝移植が可能になったことから、近年、予後は改善傾向にある。2010年から2014年の5年間の新生児ヘモクロマトーシスの実態調査では、生存率は74%(14例/19例)であり、内科的治療のみの生存率は60%(6例/10例)と報告されている。日本肝移植学会の集計によると、新生児ヘモクロマトーシスにおける過去10例の生体肝移植後10年生存率は80%と比較的良好である。生存例の長期予後については明らかでないため、継続的な経過観察が必要である。

<診断基準>

難治性疾患等政策研究事業「小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患における包括的な診断・治療ガイドライン作成に関する研究」(仁尾班)の診断基準

A. 症状

  1. 原因不明の子宮内胎児死亡
  2. 新生児期の全身状態不良あるいは、多臓器障害
  3. 新生児期の原因不明の肝不全あるいは、肝硬変
  4. 新生児期の敗血症に起因しない播種性血管内凝固障害

B. 血液・画像・病理所見、家族歴

  1. フェリチン高値
  2. MRI T2強調画像で肝臓以外の臓器に鉄沈着を示唆する低信号を認める
  3. 口唇小唾液腺生検や剖検により肝臓以外の臓器(唾液腺、甲状腺、膵臓、心臓)への鉄沈着が組織学的に証明される
  4. 同一の母から出生した同胞が新生児ヘモクロマトーシスと診断されている

C. 鑑別診断

ニーマン・ピック病 C型、血球貪食症候群、ミトコンドリア病を所定の診断基準によって除外する。

<診断方法>

項目Aの症状の少なくとも一つを満たし、かつ、項目Bの少なくとも二つを満たすものを本症とする。Cの鑑別疾患を除外する。